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タミフルと異常行動/一刻も早く因果関係解明を

河北新報
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2007/03/20070324s01.htm

 服用後の異常行動が相次いでいるインフルエンザ治療薬「タミフル」について、厚生労働省は因果関係を「否定的」としてきた従来の見解を白紙撤回し、再検討することになった。
 当然の措置であり、対応が遅すぎたと言わざるを得ない。


 厚労省は20日になって、10代の患者については原則として使用を差し控える方針を打ち出したが、その根拠は明確でない。患者・家族、医療機関の混乱や不安は続いている。
 これまでの副作用情報をすべて洗い直し、一刻も早くタミフルと異常行動の因果関係を解明しなければならない。その上で使用に関して明確な指針を示す必要がある。一定の結論が出るまで、使用を必要最小限に抑えることも考えるべきだろう。


 タミフルはインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬で、スイスの製薬大手ロシュが製造販売、国内では2001年から中外製薬が輸入販売している。
 発症から48時間以内に使用すれば、A型、B型インフルエンザに効果があるとされ、国内で年間約860万人分が販売されている。世界で最も使用量が多いのが日本だ。


 タミフル服用後の転落事故が厚労省に寄せられたのは04年からだが、これまでの対応は極めて消極的だった。
 インフルエンザの影響でも異常行動が生じることがあり、タミフル使用の有無による差異はほとんど見られないとする海外の臨床研究などがあることが、因果関係を認めない根拠となっていた。


 その一方、04年5月にはタミフルの重大な副作用として、精神・神経症状(意識障害、異常行動、幻覚など)が現れることがあると、添付文書に追記されている。
 あまりにもあいまいで、無責任な姿勢と言うしかない。


 タミフルをめぐっては、厚労省、製薬会社、研究者の関係の不透明さも指摘されている。
 因果関係を認めない根拠の一つに、厚労省の研究班が05年度に実施した調査結果がある。全国の小児科医や患者・家族を対象とした調査で、タミフル使用の有無によって異常行動の現れ方に差は見られないとする。



 ところが、輸入販売元の中外製薬から研究班の主任研究者の大学講座に、5年間に計1000万円の寄付があった。新薬の承認などを手がけた厚労省の元課長が退職後、公益法人に約2年勤務した後、中外製薬に天下っていたことも明らかになった。



 法的に問題はないとしても、利害関係にある間柄を考えれば不適切で、公平さも疑われる。
 タミフルの副作用が大きな問題なのは、近い将来の発生が懸念される新型インフルエンザと深くかかわるからでもある。


 国は新型インフルエンザ対策としてタミフルを治療の第一選択薬と位置付け、都道府県と合わせて全国で2500万人分を目標に備蓄を進めている。
 タミフルと異常行動の因果関係が明確になれば、新型インフルエンザ対策も見直す必要があろう。そのためにも、徹底した調査を急がなければならない。
2007年03月23日金曜日